オツベルと象

オツベルときたら大したもんだ。それにこの前稲扱小屋で、うまく自分のものにした、象もじっさい大したもんだ。力も二十馬力もある。第一みかけがまっ白で、牙はぜんたいきれいな象牙でできている。皮も全体、立派で丈夫な象皮なのだ。そしてずいぶんはたらくもんだ。けれどもそんなに稼ぐのも、やっぱり主人が偉いのだ。

「おい、お前は時計は要らないか。」丸太で建てたその象小屋の前に来て、オツベルは琥珀のパイプをくわえ、顔をしかめてそう訊いた。「ぼくは時計は要らないよ。」象がわらって返事した。

まあ持って見ろ、いいもんだ。」斯う言いながらオツベルは、ブリキでこさえた大きな時計を、象の首からぶらさげた。 「なかなかいいね。」象も云う。

「鎖もなくちゃだめだろう。」オツベルときたら、百キロもある鎖をさ、その前肢にくっつけた。 「うん、なかなか鎖はいいね。」三あし歩いて象がいう。

「靴をはいたらどうだろう。」 「ぼくは靴などはかないよ。」

「まあはいてみろ、いいもんだ。」オツベルは顔をしかめながら、赤い張子の大きな靴を、象のうしろのかかとにはめた。 「なかなかいいね。」象も云う。

「靴に飾りをつけなくちゃ。」オツベルはもう大急ぎで、四百キロある分銅を靴の上から、穿め込んだ。 「うん、なかなかいいね。」象は二あし歩いてみて、さもうれしそうにそう云った。